「最期までその人らしく」あるために…施設職員が伝えたい、看取りの事前準備という愛

看取り、終末期ケア

なぜ「元気なうち」に決める必要があるのでしょうか

施設で「看取り」についてお話を伺うと、「その時になってみないと……」「まだ元気だから、おいおい考えます」というお返事をいただくことがよくあります。

けれど、私たち職員はあえて「元気なうちに、少しだけ考えてみませんか」とお伝えしています。それは決して、死を急いでいるからではありません。 いざ状態が悪化してしまうと、ご家族様は深い悲しみや不安の中で、短時間に多くの決断を迫られます。精神的な余裕がない中での決断は、後になって「もっとこうしてあげればよかった」という後悔に繋がりかねません。

今、落ち着いて決めておくことは、最期の時間をドタバタと慌ただしく過ごすのではなく、「心からのお別れ」に集中するための大切な準備なのです。

「会いたい人」と「立ち合いたい人」を整理しておく

大切な時間を誰と過ごしたいか、少し整理してみましょう。

  • 「会いたい人」: ご本人に意識があるうちに、言葉を交わしてほしい方(旧友や遠方の親戚など)。
  • 「立ち合いたい人」: 息を引き取る瞬間に、そばにいたい方。

「立ち合いたい人」とその連絡先を事前に教えていただければ、私たち職員もその想いに応えられるよう、深夜や早朝であってもすぐに連絡を取り、最期のお見送りの環境を整えることができます。

身だしなみの準備(旅立ちの支度)

亡くなった後に行う身だしなみのケアを「エンゼルケア」と呼びます。 施設では、お体を清め、お洋服を着せ替え、お化粧を整えることが多いです。

  • お洋服の選択: あるご入居者様が「服なんて任せるわ」とおっしゃるので、息子様が用意したところ、「それは絶対に嫌!」と一蹴して、結局ご自身で張り切って選ばれた……なんて微笑ましいエピソードもありました。 「その人らしい一着」は、元気な今だからこそ一緒に選べる楽しみでもあります。
  • ご家族でのお化粧: 「最期の口紅は私が塗ってあげたい」「生前の眉の形にしてあげたい」といったご希望も大歓迎です。ご家族様がケアに参加されることで、より温かなお別れになることもあります。ぜひ事前にご相談ください。
  • ドライアイスの処置: お体の安置に欠かせないドライアイスの処置についても、葬儀会社が行うのか、施設で行うのか、追加料金の有無など、事前に確認しておくと安心です。

葬儀会社を事前に考えておくメリット

葬儀会社をあらかじめ決めておくと、ご本人の希望や予算に合わせた、納得のいくお別れができます。 もし「どこに頼めばいいか分からない」という場合は、施設が提携している葬儀会社を頼るのも一つの手です。提携会社は、施設の構造や搬出ルートを熟知しているため、突然のお別れの際も非常にスムーズで静かな対応が可能です。

迷った時は、遠慮なく職員に「信頼できるところはありますか?」と聞いてくださいね。

おわりに:決めておくことは「冷たいこと」ではありません

事前に準備をしておくことは、死を待つことではありません。「最期の瞬間まで、その人らしく過ごしていただくための準備」です。

大切なお話だからこそ、迷って当然です。私たち施設職員は、その人らしい生活を支えるプロであるとともに、ご本人様とご家族様の味方でありたいと思っています。 どんな小さな不安でも、いつでもお話しくださいね。

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