【施設職員の本音】「看取りについてどう考えていますか?」と聞く本当の理由

1.「看取りについてどう考えていますか?

 この問いを投げかけられた時、あなたはどんな気持ちになりますか?

大切な家族の「最期」について、頭では考えていたはずなのに、いざ言葉にしようとすると、ふわっとした曖昧な答えしか出てこない。ご本人やご家族と話し合ってきたはずなのに、人に伝えるとなると緊張し、これで本当に良いのかと不安になる。それは、ごく自然な感情です。誰しもが経験する、デリケートで重いテーマだからこそ、私たちはその問いに真正面から向き合うことに躊躇してしまうのかもしれません。

しかし、施設職員がこの問いを投げかけるのには、明確な理由があります。それは決して、あなたを急かしたり、決断を迫ったりするためではありません。むしろ、ご家族が抱える不安を理解し、適切な支援を提供するための、大切な第一歩なのです。

2.なぜ施設職員は「看取り」について尋ねるのか?~3つの本音~

 施設職員が看取りについて尋ねる背景には、ご家族への深い配慮と、プロとしての責任感があります。ここでは、その「本音」を3つの視点からお伝えします。

本音1:ご家族の「心の準備」と「支援の必要性」を探るため

 職員が「どの程度考えていますか?」と尋ねるのは、ご家族の看取りに対する考えの「深度」を測るためです。まだ漠然としているのか、おおまかな方向性は決まっているのか、それとも綿密に計画されているのか。その段階を把握することで、私たち職員は、ご家族にどのような支援が必要かを判断します。

 もし、決断に迷われている様子があれば、私たちは積極的にお話をお伺いし、延命治療に関する詳しい情報提供や、専門家との連携を含めた支援を検討します。決して「早く決めて!」と急かしているわけではありません。ご家族が安心して「最期」を迎えられるよう、共に考え、支えたいと心から願っているのです。

本音2:緊急時に備え、ご本人の「最期の願い」を尊重するため

 高齢者施設という特性上、ご入居者様の状態は予期せぬ形で急変することがあります。ある日突然、胸の苦しさを訴え、緊急搬送される。そんな事態も決して珍しくありません。その際、搬送先の病院で積極的な治療を行うのか、それとも痛みの緩和を優先し、住み慣れた施設へ戻ることを選択するのか。この判断は、ご家族が「どのような最期を迎えたいか」という、ご本人の意思やご家族の思いに深く関係します。

 延命治療の有無という「方向性」だけでも決めておいていただけると、緊急時においても、ご本人の尊厳とご家族の願いを最大限に尊重した対応が可能になります。これは、私たち職員が最も大切にしていることの一つです。

本音3:ご家族の「不安軽減」と「最善の選択」をサポートするため

 看取りは、誰にとってもデリケートで、時に感情的になる話題です。施設職員もまた人間として、ご入居者様には可能な限り穏やかな最期を迎えていただきたいと願っています。そして、その過程でご家族が抱える不安を、少しでも軽減したいと強く感じています。

 ご入居者様は、たとえ認知症や寝たきりの状態であっても、人生経験豊富な大先輩です。そして、面会に来られるご家族の不安な気持ちは、案外伝わるものです。その不安を一人で抱え込まず、私たち職員を「相談相手」や「知恵袋」、あるいは「他の入居者様の事例を教えてくれるツール」として、どうぞ積極的に活用してください。曖昧なままにしておくよりも、ご家族の思いが明確である方が、私たちも安心してサポートできます。

 

4.「まだ何も…」で大丈夫!正直な気持ちの伝え方

 では、実際に「看取りについてどう考えていますか?」と尋ねられた時、どのように答えれば良いのでしょうか。最も大切なのは、「正直な気持ちを伝えること」です。

 •まだ考えていない場合:

「まだ何も…」と正直に答えてください。むしろ、その「考えているかどうか」を職員は知りたいのです。

 •家族間で意見が異なる場合:

「私自身は延命治療をしてほしいと思っていますが、家族間ではまだ意見がまとまっていません」と、ご自身の意見と現状を率直に伝えてみましょう。

 •漠然とした方向性がある場合:

「詳しくは決めていないのですが、痛みだけは緩和してほしいです」と、現時点での方向性を伝えるのも大歓迎です。

「延命治療」と一口に言っても、大きな病院での治療、心肺蘇生、人工呼吸器の装着など、その内容は多岐にわたります。「痛みの緩和」も、点滴や呼吸器の使用など、考えるべきことは他にもあります。これらを全て完璧に決めておく必要はありません。まずは、あなたの正直な気持ちや、現時点での方向性を伝えることが、次のステップへと繋がる大切な一歩となるのです。

5.迷ったら逆質問!「どこまで知りたいですか?」が最強のコミュニケーション

 看取り、と一言で言っても、その内容は多岐にわたります。なくなる場所、看取ってほしい人、最期に食べたいもの、着たい服、宗教、葬儀のことなど、考えることは山ほどあります。もし、どのように伝えれば良いか迷ってしまったら、私たち職員に「どこまで知りたいですか?」と逆に質問してみてください。これは、非常に有効なコミュニケーションの手段です。

 「看取り」という言葉を直接使うことに抵抗がある場合は、「最期の時の生活や医療について」など、少し言い方を変えてみるのも良いと思います。また、ご本人の目の前で話しにくい内容であれば、面会前に「面会の後、少しお話できますか?」「20分後に本人のいないところで、少し相談したいです」などと、事前にアポイントを取っておくとスムーズです。

6.看取りは「避けては通れない道」だからこそ、共に考え、不安を減らしましょう

 看取りは、デリケートでありながらも、いつか必ず訪れる「避けては通れない道」です。施設職員は、可能な限りご本人の思いを叶え、最期は穏やかであってほしいと心から願っています。そして、その過程でご家族が抱える不安を、少しでも軽減したいと強く思っています。

「看取りについて考えていますか?」と尋ねられたら、どうか正直な気持ちを伝えてください。「まだ決めていません」「延命治療を考えています」「痛みはなくしてほしいです」「家族間で意見がまとまっていません」——どんな答えでも構いません。そして、伝え方に悩んだら、「どこまで知りたいですか?」と逆に質問してみるのが、最善のコミュニケーションです。

 不安をそのままにせず、私たち職員を上手に利用して、共に「最期」について考え、少しでもその不安を軽減していきましょう。私たちは、ご入居者様とそのご家族の味方です。

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